三脚と雲台

三脚と雲台

三脚についての課題

2016年の山行を振り返ると、撮影に関して課題が二つ浮き彫りになった。

(1) 三脚の縮長(現状 400mm )をもっと短くしたい。

(2) D810 に 70-200f4G を加えた実装備重量約 2.5Kg を縦位置でもスムーズに使いたい。

(1)について

最近は日高の山を撮りたいとの思いが強い。しかし、日高の山を撮るとなると林道や沢など条件が厳しいため、装備をできるだけ軽量化したい。

2016 年に縮長 400mm の小型三脚を新たに購入したのだが、当初の思惑に反してザックの下に横方向に括り付けるには難があった。藪漕ぎやハイマツなどに加えて踏み跡などが狭く、左右にぶつかったり引っかかったりした。400mm ではやはり長すぎて結局ザックのサイドに縦方向で固定することになり、バランスが悪く、パッキングにも手間がかかった。

もっと短い三脚ということで、あらためて探してみてベルボンの ULTREK シリーズに目を付けた。これだと縮長約 300mm、余裕をもってザック下部に横固定できる。

(2)について

雲台については、現行の縮長 400mm の小型三脚の自由雲台では耐荷重 4Kg の仕様にもかかわらず実装備重量約 2.5Kg のカメラを縦位置で正確に固定することができず、実用にならなかった。やはり3ウェイ雲台がいいのかなと思った。

選択肢は

縦位置ではL型ブラケットが便利との情報をネットで得た。結局、縦位置にする方法の選択肢は、

① 3 ウェイ雲台

② 強力な自由雲台

③ L型ブラケット+自由雲台

ということかなと思う。

①は重心がずれるために三脚自体の強度が必要となる。ULTREK シリーズ( UT60 )は6段三脚のため、最も細い脚は最初から使うつもりはない。そのため開脚の幅がせまくなって重心のずれに弱いことが想定される。また、3ウェイ雲台は収納性が悪い。レバーを外せば比較的コンパクトになるものの、セッテイングに手間がかかることになる。

②は重心がずれるのは1.と同じで、加えて現行の三脚でその華奢な作りにすっかり信頼感を無くしている。

③は割り切った使い方で魅力的ではあるが、使い勝手(持参するモノが増える、取り付け取り外しの手間が増える、付けっぱなしだとカメラのカサと重さが増える)に制約がありそうだ。

ここまで考えて判断に迷ってしまった。

迷うのは調査不足が原因と考え、さらに調べるうちに、ヨーロッパでは3ウェイ雲台よりも自由雲台が主流との情報を得た。ということは、しっかりした自由雲台の実力は自分にとって未知の領域なのかもしれないと思うに至った。

とっかかりなので新興ブランドのリーズナブルな製品 ( SIRUI K-20X ) を選んで検討してみた。

カメラを 90 度倒して地面を撮ったり、縦位置にするとき、ボールに最大の回転力がかかるが、その力はボールの中心からカメラの重心までの距離とボールの半径によるテコの関係で作用する。D810 だと重心位置はカメラ底面から約 50mm、K-20X のボール中心からシューの天面までは見た目で約 50mm、加えて約 100mm になる。一方 K-20X のボール直径は 38mm なので、100mm / 19mm のテコの関係になる。約 5.3 倍だ。

なので、カメラ総重量 2.5Kg だとボール表面にかかる応力は 13.25Kg、これをボール表面の仕上げ(摩擦係数)と固定レバーの力で支えることになる。実際には安全率として 2 倍をみると 26.5Kg になる。だから、耐荷重(ボールを固定する能力)は 27Kg 以上なければ総重量 2.5Kg のカメラを余裕をもって 90 度の角度まで傾けることはできないともいえる。K-20X の最大積載荷重は 25Kg なので、ほぼOKということになる。(このあたり自分の勝手な理解で書いたが業界の基準がよくわからない。耐荷重ではなくて静荷重で表記している製品もあるようなので、もしかしたら統一基準が無いのかもしれない。その点ヨーロッパ製品の場合は歴史も古く、なにせ ISO の本場なのでしっかりした基準があるのかもしれない。そのうち探してみたいと思う。)

実際に SIRUI K-20X を購入してみると、目論見通り D810+70-200F4G をスムーズに縦位置に固定することが出来た。わかったのは自分がボール雲台の本当の実力を知らなかったということだ。

重心の傾きについては三脚の問題になるのだが、三脚を平らな場所に設置できる場合は特に問題にならない。斜面等の悪条件時には不利になるが、そもそも UT60 を使用するのは厳しい条件下のことであって、多少の不便さは許容範囲と考えている。

ザックに取り付けた状態、ケースに納めストラップを脱落防止のため固定している

余談になるが、雲台として K-20X を採用するに合わせてクイックシューをアルカスイス互換に変更した。いままではベルボンの QRA-667L という大型のものを使用していた。これは中版カメラと 35mm 版を兼用するために必要だったのだが、デジタル一眼のみ使うようになって取り回しの不便さが目立つようになった。

車の近傍で撮るなど、機材を背中に担ぐ予定のない撮影旅行などでは大型三脚を使うので、そんな場面では QRA-667L をこれからも使い続けようと思う。

<2017.10.8追記>

三脚の携行方法に関して今年の夏山での反省として何点か追記したい。

先ず、ザックへの取り付け位置だが、上の写真のように横位置で外付けしているが、これだと重心が後ろの方にずれる傾向になる。ザックの重量にもよるが、少しオーバーに表現すると肩のハーネスが後ろ方向に引っ張られる力が働き、それを補正するために前かがみの姿勢になりがちになる。大きな支障とまでは言えないが、好ましくない傾向だと思う。

対策として、日帰りなどでザックの底部が空いている場合はそこに三脚を収容した。この位置だと重心の問題は解消する。ただし、ザックを岩の上に下ろす場合などは中の三脚に気をつかわなければならない。

テント泊などでザック底部が空いていない場合は、雨蓋の中か上に固定することにした。

次に自由雲台についてだが、実際にフィールドで使い込んでみるとやはり欠点が見えてきた。私の場合、重量バランス的に最も厳しいのは D810 に 70-200f/4G を付け、カメラを傾けた場合だ。室内ではそこそこの確信を得たものの、実際にマクロ撮影などで微妙な構図を追求しているときにアングルの固定感覚に今一つキレがないというか、剛性の不足を感じたのだ。構図をギリギリに追い込んでいないときは気にならなかったのだが、明らかにストレスを感じてしまった。やはり K-20X には荷が重すぎたのだろうか。

いずれもフィールドにおける最も厳しい条件下で感じた問題点なのだが、しかしそれでもこのテーマは振出しに戻ってしまった感がある。来期に向けてさらなる見直しが必要だと思っている。

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