日の出、日没の写真は撮りたいのだが、場所と時間の制約が厳しいことから、なかなか機会に恵まれなかった。というよりはあえてそのための行動を起こそうとまではしなかった。若かりし頃、南アルプスの稜線でテント泊し、夜明けの富士山を見たときは感動したのだが、だからといってそれを求めて、そのための山行をするところまではいかなかった。しかし、体力的に登山が無理になったら、車で行ける範囲で日の出、日没の写真を撮ろうという"順番"は意識してきた。
いま、その時が来たのかもしれない。まだ登山をやめるつもりはないのだが、山行回数が減っていることは間違いなく、その分なのかどうか、気が付いてみると実際に日没、夜明けの写真を撮り始めている。いったん、この流れができてしまうと、どんどん山が遠ざかってしまうのだろうが、まあそれも致し方無いところだと思う。
日の出にしろ日没にしろ、撮るためには、撮影ポジションと被写体、そして太陽の位置関係が決定的な要素になる。なので、出かける前にそのための調査活動が重要になる。
先ずは、被写体、どこをどのように撮るか、イメージを膨らませる。そして、位置関係、これは私の場合はカシミール3Dで国土地理院地図を参照し、その被写体にあった撮影ポイントを探す。日の出であれば撮影ポイントは被写体の西側で角度は被写体からみておおよそ250~270°の範囲になる。撮影ポイントから被写体を見ると70°~90°くらいの範囲になる。一方、日没であれば、被写体から撮影ポイントを見ると、50°~120°くらい、撮影ポイントから被写体を見ると230°~300°くらいの範囲になる。角度はいずれも北から右回りの角度で表現する。これらの角度を外れるとそもそも太陽がそこまでいかないか、あるいは真冬等で撮影ポイントへのアプローチがままならなくなる。
おおよその検討をつけたあとは、地図上で詳細な角度を割り出し、その撮影地点と角度から日の出・日没の年月日、時刻を計算する。この計算は、地球を回転楕円体とみなし、その回転楕円体表面の撮影ポイントの接線方程式が撮影ポイントと太陽を結ぶ直線と一致する年月日、時刻を割り出せばよいことになる。
ただし、太陽と地球の位置関係の把握は天文学の範囲となり、一般的な数学の範囲を超えてしまう。そこで、ネット上に公開されている計算サイトを利用させてもらう。私が利用しているのは、カシオ計算機株式会社が公開する「ke!san」で、「日の出日の入り計算」を使っている。このサイトでは、撮影ポイントの経度、緯度、標高、年月日を入力すると、日の出、及び日の入の時刻と方位角が表示される。
計算結果の方位角が地図から割り出した方位角に最も近くなるように日付を変えて計算を繰り返す。
地図から得られる緯度、経度は60進数(度、分、秒)なのに対してこの計算式は度以下を10進数で入力するので、あらかじめ60進→10進変換が必要になる。
例えば、摩周湖第三展望台から摩周岳頂上に日が出る瞬間を撮ることを考えてみる。第三展望台は標高約 650m で、緯度 43°34'59.98"、経度 144°30'13.54" となる。そしてそこから摩周岳頂上を見ると角度は 104.8°になる。ここまではカシミール3Dによる地理院地図から理解することができる。
地図で角度を確認(国土地理院地図を使用)
この条件で CASIO のサイトで日付を色々と変えて計算してみると、10 月 24 日 が角度 104.5025°で日の出 5:41:26、10/25 が角度 104.9869°で日の出 5:42:42 となる。10/24 でも 10/25 でもほぼ頂上から日が出るという結論になる。時刻に関しては撮影対象が海面であることを前提にしているので標高 857m の摩周岳頂上では当然遅くなることになる。また、南中角度は 10/25 で 34.6588°なので、太陽は日の出の後は垂直に上るのではなくて右方向にずれながらの登ることになる。だから、摩周岳頂上だと日の出の角度も 104.9869°よりも大きくなる。このあたりは目安と考えてあとは現地で自分の行動で合わせることになる。
さらに付け加えるならば、摩周岳の火口壁西側には標高855mの第二峰があり、第三展望台からは本峰との距離が接近して見える。また、摩周湖を撮るときはカムイシュ島の位置も構図を決める上で大切な要素になる。
摩周湖の例を書いたが、同様に他の場所でも計算で日の出、日没撮影に最適な日時を知ることができる。これに地図から画角を決める作業をすればあらかじめレンズを選定することもできる。撮影行の前の楽しい作業となる。