101番目の日本百名山と言われることもあるニペソツ山、この山を撮ろうとすると、北東に位置する天狗山が良いと思う。天狗山は稜線から上は植生がほとんど無いため、撮影ポイントの自由度が大きい。
しかし、ニペソツ山は東側に向かって岸壁になっているため、東側に位置するホロカ山(1166m)も魅力的な撮影ポイントに違いない。但し、ホロカ山は登山道が無いうえに頂上まで木に覆われているため、残雪期以外は藪漕ぎを覚悟しなければならない上に、頂上付近でニペソツ山を見通せるポイントを見つけられるか否か危ういと思う。
これを確認するために、4年前の残雪期にスノーシュー登山を試みたが、残念なことに力及ばず途中敗退となってしまった。そしてそこで痛めた手首の回復には半年かかってしまった。
あれから4年、年齢やら体調不良やらコロナやらで、結局、再トライはできていない。それどころか、もはや登山は無理かもしれない。日没にしろ、日の出にしろ、標高差600m程度の春山を暗い時間帯に三脚など担いで単独登山となれば、先ずは周囲に対する説得から始めなければならない。いや、その前に、そもそも自分の現状やいかに...
ということで、代替案も考え始めたのだが、地図やGoogleEarthでやっと見つけた物理的に行けそうなポイントは4か所。
タウシュベツ橋梁付近から
最初は"タウシュベツ橋梁"、ニペソツ山の東南に位置し、林道を通過して車で到達できる。湖を前景として幌加川の渓谷越しに直線距離で14km程度、200mmレンズで捉えることができると思う。しかし、ここはアウトドアツアーの対象地になっていて、入林許可は日中時間帯のみ、ゲートのシリンダー錠は借り受け返却とも日中時間帯のみ。従って、日没、日の出の写真は撮れない。
タウシュベツ橋梁から(国土地理院地図使用)
幌加川三の沢川左岸林道から
二番目の場所は、山の斜面にある林道のポイントでニペソツ山から7km程度の位置にある。ここは三の沢川の狭い沢の奥にニペソツ山を捉える位置関係にあるが、林道は既に廃道になっている様で、入山の許可を得て行ったとしても林道入り口から数百メートルの藪漕ぎになるかもしれない。日の出を撮るために暗い時間帯に行動することは熊対策上から無理があり、行くとすれば残雪期になってしまう。しかし、その時期はアプローチとなる林道自体が通行できない。さらには現地に到達できたとしても植生の現状がわからないので見通しのポイントを確保できる保証もない。
三の沢川左岸林道から(国土地理院地図使用)
糠平ダムのダムサイトから
三番目は糠平ダムのダムサイト、ここはニペソツ山から18km、300mm程度のレンズで捉えることができると思う。しかし、ダムサイトは通常は立ち入り禁止の可能性が高く(未確認)、また、ダムサイトから湖岸の古林道に100m程度入った位置がベストと思われるものの、実際に現地確認してみなければ見通しがどうなっているか何とも言えない。トライする敷居は低そうなものの、そもそも立ち入りの許可が得られるか否かも含めて確認が必要。
糠平ダムサイトから(国土地理院地図使用)
糠平ダム東尾根上Co620付近から
四番目は、ニペソツ山からそのダムサイトのほぼ延長線上にある尾根の上Co620、国道脇から取り付いて標高差100m程度、送電線の鉄塔があるので点検道はあるはず。ただし、ダニだらけになるのは目に見えているので、ここもやはり許可を得たうえで残雪期のスノーシューが良いように思える。危険なところは無さそうだが、尾根の上は少し平らになっているので撮影ポイントを決めるのに時間がかかりそうだ。総じて難易度は高くないと思われる。
Co620から(国土地理院地図使用)
ということで、現実的なのは、日中時間帯であれば、一番目のタウシュベツ橋梁、そして、立ち入りが可能であればの話だが三番目のダムサイト。日の出・日没の撮影であれば、ここも入林には所有者の許可が必要だろうが四番目の尾根のみということになる。
ニペソツ山(丸山頂上から)
上の写真は丸山頂上から撮ったニペソツ山。見えているのは南稜で頂上は隠れていて見えない。少し東方向に下ると頂上が見えると思う。このアングルは古い本だが北海道撮影社の「北の山脈」1972年夏刊のグラビアに載っているのみで珍しいと思う。ニペソツ山まで水平距離で約4.3km離れているが、標高差320mの岸壁は巨大な岩の塊に見える。北東面、東面からみるのとは異なったニペソツ山の表情だと思う。
かつて、この丸山経由でニペソツ山に至る登山コースがあった。北海道撮影社刊「北海道 山のガイド」(昭和44年)によると、「幌加川5の沢コース」について次のように記載されている。
「地図を十分に読みこなせ、沢にも、ブッシュ漕ぎにも相当馴れていない限り入らないこと。登山道はおうかた消滅し、造材道が現れると入り組んで、鹿道のほうがよいくらいである。ただし、大平側からのニペソツ山の威容は、十分その苦闘に応えてあまりある。」(北海道撮影社昭和44年6月15日刊「北海道 山のガイド」から引用)
昭和45年(1970年)の時点で既に廃道同然だったことがわかる。ニペソツ山の南尾根上の突起となる標高1736m地点は「大平山」と言われていたようだ。