(1) レイリー散乱について
(2) エアロゾルの概要
(3) 微小粒子の形成と蓄積
(4) 大気中の動態と二次粒子生成
(5) エアロゾルの化学反応
(6) 大気電気学
(7) 量子物理学からのアプローチ
(8) データ取得・分析と検証
(9) まとめ
写真撮影を目的として大雪山系の赤岳に登ったときのこと。8合目付近で後ろを振り返ったとき、遠くの山並みが美しいブルーに染まっていることに気づきました。それまで見たことのない深く美しい青のグラデーションに夢中でシャッターを切り、気付いた時にはフィルムすべてを使い切っていました。そのとき、「これは一生に一度のチャンスかもしれない」と思ったことを覚えています。
上の写真がその時の写真の1枚です(トリミングしています。)画面中央がクマネシリ山塊で、左からクマネシリ岳、ビリベツ岳、それに重なるように西クマネシリ岳、少し離れてユニ石狩岳越しに南クマネシリ岳が見えています。
夜明け前であれば、黎明(れいめい)、払暁(ふつぎょう)、曙(あけぼの)、東雲(しののめ)、暁(あかつき)などの言い方があるように、光が弱い時間帯独特の雰囲気があります。しかし写真は完全に夜明け後のものです。何をもって夜明けというかという問題もありますが、日の出の後3~4時間も経っていればもはや黎明とはいえません。
あれから長い年月が流れ、仕事をリタイヤして時間が自由に使えるようになった今、あのときのシャッターチャンスを再度求めて行動を起こしたいと思うようになりました。しかし、いつもあのような光景に遭遇できるわけではありません。かといって、昔のように通いつめるような非効率な方法は、老い先短く体力・資力の衰えを自覚する自分には無理な話です。
そこで、遠くの山が青く見える気象条件を把握して、できるだけ効率的な撮影行を計画しようと思いました。
しばらく粘って調べるにつれ、これは簡単なテーマではないと思うに至りました。実は私は最近まで「空が青いのは酸素の色が青いから」なんて思っていました。特に根拠があったわけではないのですが、なんとなくそう思い込んでいたわけです。今回のテーマに直面するまではそれで不都合があったわけでもありません。私は一応理系の人間ですが、専門は電気工学とIT分野で、他の分野とくに化学の分野については全くの素人であったと思い知らされることになりました。
今の認識では、エアロゾルのそれも微小粒子の中の小粒子群の問題で、その先には化学の世界があるような気がしています。
ここに記載する内容は約1年間、北大図書館と道立図書館に通い、また書店で購入した専門書、学生時代の古い教科書、ネットの情報など各方面から集めた知識をもとに構成したものです。所詮素人の取り組みなわけで、また、ゴールにも到達していませんが、自分にとっては未知なるものを理解しようとする好奇心に駆られた充実した時間でもありました。
<遭遇した事象の整理>
私がかつて実際に遭遇した光景をできるだけ客観的に記載すると次のようになります。
(1) 場所は大雪山系赤岳の中腹で標高約1800m地点
(2) 東北東方向の約20Km遠方の山並みを中心にその前後を含めて深い青色に染まった
(3) 日時は2002年7月26日、午前7時ころ、この時期の日の出は4時過ぎなので、日の出の後3時間程度となる。
(4) 水蒸気は比較的少なかったようで、谷筋がわずかに白くなる(ミー散乱)程度であった。
(5) 雲は少しあったが高度は比較的高く「晴れ」の状態であった。
(6) 経験的に山並みの青色の濃さは日によって大きく異なる。見通しが良くても青色が薄く、くすんだ色に見えることが多い。
(7) 気象台のデータベースで確認したオホーツク沿岸地域の当日の気象データ
場 所 | 降水量(mm) | 気温(℃) | 湿度(%) | 平均風速 (m/S) |
最大風速(m/S) | 最多風向 | 日照時間 (h) |
|||||
合 計 | 1時間 最 大 |
平 均 | 最 高 | 最 低 | 平 均 | 最 小 | 風 速 | 風 向 | ||||
雄 武 | 4.5 | 2.5 | 14.8 | 17.2 | 12.6 | 93 | 85 | 1.4 | 3.5 | 北 | 北北西 | 1.1 |
紋 別 | 3 | 2 | 15.3 | 18.0 | 13.0 | 91 | 78 | 1.9 | 5.2 | 北西 | 北西 | 2.7 |
常 呂 | 9 | 9 | 16.3 | 20.1 | 13.6 | - | - | 0.9 | 2 | 西 | 北東 | 4.3 |
網 走 | 9 | 8 | 16.3 | 18.8 | 14.7 | 91 | 80 | 1.9 | 5.1 | 北西 | 西 | 3.4 |
遠 軽 | 9 | 8 | 19.0 | 25.0 | 13.9 | - | - | 1.1 | 3 | 北北東 | 北北西 | 3.6 |
留辺蘂 | 1 | 1 | 21.9 | 28.1 | 15.2 | - | - | 1.3 | 4 | 北北東 | 東北東 | 5.3 |
北 見 | 4 | 3 | 21.3 | 28.4 | 16.1 | - | - | 1.8 | 5 | 東 | 東北東 | 3.8 |
上 川 | 0 | 0 | 22.2 | 28.1 | 18.1 | - | - | 1.7 | 4 | 西北西 | 西 | 7.4 |
※気象庁ホームページの「過去の気象データ」から引用
何がどのように影響したのかは今の段階では理解できていませんが、雨、風、風向、気温などが空気環境に影響する可能性があると思われるのでとりあえず関係ありそうな要素を抜き出してみました。